ボルボ発祥の国、スウェーデンの車事情

日本でもたまに見かけるボルボ車ですが、メルセデスベンツやBMWほどではないにせよ、高級感がありますよね。このボルボの発祥地がスウェーデンだというのは意外と知られていない事実でしょう。しかし、ここで触れるスウェーデンの車事情には、知られておらず、かつ驚くべき現実があったのです。

スウェーデンの大都市の朝晩は、道路が車だらけ

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スウェーデンの大都市圏の人口は、日本の大都市圏ほどではないにせよ、非常に過密です。そして、通勤者はほとんど自分の車を使います。それゆえ、朝晩の道路は、車であふれることがよくあります。日本では、通勤に自分の車を使うことは、大都市圏ではあまりなく、ほとんどは電車やバスといった、公共の交通機関を使用しますが、スウェーデンはそのようなことはありません。
そのようなことが起こる理由は2つあります。ひとつは、公共の交通機関がそこまで整ってはいないことです。もうひとつは、スウェーデンという国自体が、働かなくてはいけない環境に置かれていることです。スウェーデンは、男性も女性も、高校を卒業して満19歳になると、親元から独立して、ひとり暮らしをするのが普通だという世相があります。もし高校卒業後も親元に居ると、「マンボ」という言葉で冷やかされる危険があります。当然ながら、ひとり暮らしで生活していくには、それ相応の収入を働いて稼ぐ必要があるので、通勤のためにどうしても車が必要になるのです。
日本でも、いつまでも親元に居ると「パラサイト・シングル」や「すねかじり」という言葉で蔑視される傾向はあります。しかし、それでも20代の10年間ずっと親元に居るのは、珍しいことではありません。スウェーデンでは、それはもはや許されない環境にいると言っても過言ではないのです。道路が車であふれるのは、その結果といえます。

古い車は当たり前。たまに「錆」を見ることも


スウェーデンの街中では、ボルボなどがリリースした最新の車ではなく、中古車が走っていることがよくあります。しかも、それらの車には、「錆」が見られることすらあるのです。これは、スウェーデンを訪れた観光客が驚かれる事実です。
なぜスウェーデンの街を走る車に古いものが多いのかというと、国民が「お金に余裕がない」からです。特に若者は、ボルボやBMWなどの新車に憧れは抱いても、その理想を実現するだけのお金がありません。だから、中古車を選ぶのです。しかも、車の専門ディーラーは非常に割高なため、新聞、雑誌、インターネットなどのアナウンス欄で、割安の車を探して個人売買することがよくあります。車が新しくて清潔かどうかは二の次で、安くても長持ちするもの、備え付けのパーツの質が良いものの方が、彼らにとっては重要なのです。
スウェーデンの街では、中古車が走っていることが多いと述べましたが、それらには90年代や80年代の車がよくあります。しかも、ボルボに限らず、自動車メーカーの国籍が非常に多岐に渡っています。中でも、実はトヨタ、ニッサン、ホンダなどの日本車の割合が多いです。日本車は、錆には弱くても、パーツの質が非常に良く長持ちしやすいため、スウェーデン国民に人気があります。だから、スウェーデンの車のドライバーは、錆びても長く乗り続けます。20年前や30年前の日本が、今のスウェーデンの街で再現されているのです。

スウェーデンでは、運転免許取得、運転までも命がけ?


スウェーデンの街は車であふれることも多いですが、丈夫で長持ちする、という条件をクリアさえすれば、マイカーを手に入れるのは簡単に見えます。しかし、スウェーデンは若者を中心に、マイカー探し以前に、運転免許取得までもが大きな「壁」になります。また、いざ運転となっても、交通ルールに非常に厳しい制限があります。
運転免許取得にかかる費用は、その時のレートにもよりますが、日本円で約40万円が必要です。ただし、これはあくまでも教習と試験1回分の料金にすぎません。もし試験が1回で合格しなかった場合は、追加講習と追試が必要になり、当然別料金がかかります。そして、試験は非常に難しく、合格率が30%前後の狭き門です。日本では、学科試験や技能試験のノルマが高めとはいえ、きちんと教習を受ければ、問題や求められる技能はそこまで高くはなく、救済措置がある場合もあり、追加料金もあまりかかりません。スウェーデンでは、同じようにはいかないのです。
スウェーデンの交通ルールの厳しさも、日本とは比べ物になりません。リアシートのシートベルトは、日本の20年以上前からすでに義務になっています。そして、道路に出ても至る所で監視されていて、制限速度を1km/h超えただけでも処罰の対象となります。一般車がそれ以外の走行レーンを走っただけでも、免許が取り消しになります。スウェーデンには、「遊び」が許されない車事情があるのです。